Kaduna’s blog

2次記憶として徒然に

2018年12月の読書

なぜか12月の中旬に入ってから,アクセス数が2,3倍になっており困惑しています.

(そもそもこんな辺境のブログにアクセスがあること自体驚きですが…)

来月は修論をまとめているので更新をしません.

それでは、良いお年を〜

理工系のためのトポロジー圏論微分幾何~双対性の視点から~

Best Readings of This Year. 

研究室の端に転がっていたものたまたま,手に取ってみたのですが当たりでした.

数学書ではないので所々厳密ではないですが名著です.

幾何学のいくつかの概念の下にあるお気持ちについて素朴に説明がなされており,圧倒的にオススメです.

学部1.2年生のときに出会いたかった本でした.

位相空間を見分けるために,(連続性→)ホモトピーホモロジーと位相不変量のコンセプトを簡潔に導入しています.

これを圏論の視点からまとめて,微分幾何に少し入門しています.

圏論の章は少し物足りなく感じたので,著者のpdfや以下のサイトを読み流していました.素晴らしいブログです.

圏論 | 壱大整域

http://www.phys.cs.is.nagoya-u.ac.jp/~tanimura/lectures/tanimura-category.pdf

圏論を触りだけ学び,テンソル積のお気持ちが多少分かるようになった気がします.

2月以降に余裕があれば,ノートを作ろうと思います.

 

志学 数学 研究の諸段階~発表の工夫~

数学という学問に向き合うための観念的な事柄が美しく書かれております。

研究をしている中で徒然に考えることや、教授による指導や学会発表から何となく学ぶことについて、改めて提示されています。

私のように能力が足りない人間には、若干理想主義臭く感じましたが、勇気づけられる内容でもありました。

著者の先生のように、純粋な思いを忘れずに物事に取り組んでいきたいものです。

そして、数学者になりたい人生でした😭😭😭

最後に、Impressiveな一文を引用してみます。

偉大な天才の創造になるものは、多くの人を鼓舞する普遍的な力をもっており、広い範囲から自分に合ったものを選び感動し鼓舞される事は、創造的意欲と密接に結びついていると思います。 (p.143, Ⅳ-1 心の境界線を超えて)

志学数学 -研究の諸段階 発表の工夫 (シュプリンガー数学クラブ)

志学数学 -研究の諸段階 発表の工夫 (シュプリンガー数学クラブ)

 

 

一人の力で日経平均を動かせる男の投資哲学

噂のcis本です。

FMともディーラーとも明確に異なるデイトレーダーという存在の考え方が書かれていますが、プロスペクト理論やImformation Ratioに落とし込める事柄などオーバーラップも存在し繋がりを感じます。

相場操縦まがいの発言や、AIに関する発言はウ~ンというところです。

あとは、金融周りで成功されている(上がっている)方のお話を伺っていたりすると、時代に恵まれていた側面を感じることもありますね*1

一人の力で日経平均を動かせる男の投資哲学

一人の力で日経平均を動かせる男の投資哲学

 

 

*1:HFやらFXやら外銀やら

2018年11月の読書

すごいHaskellたのしく学ぼう!

就職活動をしていた時に,とある面接官の方から関数型の言語を勉強することをオススメされたことがあったので,研究室の同期とダラダラ読んでいました.

購入してから知ったのですが,オンラインで公開されています.

Chapters - Learn You a Haskell for Great Good!

本書を読んで,Haskellの文法がそれなりに分かるようになりました.かの有名なモナドについても「使い方が」それなりに丁寧に書かれています.

ただし,この本だけでは明らかにコーディング量が足りないので別に開発をする必要があります.少し調べたところ,xmonadのコードレビューがよさげです.*1

また,型推論・遅延評価といったコンパイラの挙動が説明が全くないため,結局,Haskellという言語の根本的なところは分からないです.

とりあえず,Tsuru Capitalのインターンの課題*2を目標にボチボチやって行こうと思います.

すごいHaskellたのしく学ぼう!

すごいHaskellたのしく学ぼう!

 

 

代数学への招待:多様体とは何か

定義は簡単な多様体ですが,そのお気持ちが分からないので読みました.

30講で有名な方が書かれた本ですが,この先生の本は全体的に私にはイマイチ合わないことを再確認しました…

多様体の思想に関して程よくまとまっていますが、幾何の勉強で初めに読む本ではない気がします.

 

2018年10月の読書

TOEIC(R) L&Rテスト 至高の模試600問

 今月は、サークルや結婚式のお手伝いやらなんやらでいろいろと忙しく、まとまって本を読み切る時間が取れませんでした。

一応、最後まで読んだと言い切れるのは、借りてきたTOEICの参考書です。

オンシャーから受験するように言われていたので、準備として1週だけやりましたが、本番ではReadingが20問くらい解けず、大爆死したのであんまり意味はなかったです。

最近は集中力が2時間ももたないので必然の結果でした…

おそらく850点に届かないくらいな気がします(泣)

【新形式問題対応/CD-ROM付】 TOEIC(R) L&Rテスト 至高の模試600問

【新形式問題対応/CD-ROM付】 TOEIC(R) L&Rテスト 至高の模試600問

 

 

追記

蓋を開けてみたら、9xx点と意外に高かったです。

多様体の基礎 松本幸夫

最低限の微分幾何の勉強をしようと思い立ったため2冊目に読んだ教科書です。

非常に論理展開が自然に感じられ、私にとっては良書でした。

世間一般ではラノベと言われており、数日で軽く読み終わるという噂が流れていますが、私の能力では約1ケ月かかった上に理解度は8割程度です…

とはいえ、本書は多様体にまつわる各種概念の説明と定義に終始していることは確かなので、幾何学の本当に基礎の基礎であることは間違いないでしょう。

なので、読んでいても数学的な感動は感動あまり生まれませんでした。

次は小林昭七「接続の微分幾何ゲージ理論」に取り掛かっていますが数カ月はかかりそうです。卒業までに読み終われるか怪しいところです。

 

 

多様体の基礎 (基礎数学5)

多様体の基礎 (基礎数学5)

 

 

曲面とベクトル解析 小林真平

夏休みに なんとなく、数理ファイナンスからの逃避として最低限の微分幾何の勉強をしようと思い立ったため1冊目に読んだ教科書です。 

解析も幾何もいろいろ忘れているのでなにか新しい教科書を、と思っていたところ、井ノ口順一「リカッチのひ・み・つ」で挙げられていたので読み始めました。

道具としてベクトル解析や微分形式を利用する物理の人には程よいくらいの記述の教科書でしたが、私はもう少し厳密さを求めていたので読む必要はあまりなかったかもしれません。

ただし、すべてを消化出来たわけではなく、最後のGauss–Bonnet theorem, Poincaré–Hopf theoremはやや分からなかったです。

一応、本来のブログの趣旨として個人的なまとめノートを作ってみました。

 

 

曲面とベクトル解析 NBS (日評ベーシック・シリーズ)

曲面とベクトル解析 NBS (日評ベーシック・シリーズ)

 
リッカチのひ・み・つ 解ける微分方程式の理由を探る

リッカチのひ・み・つ 解ける微分方程式の理由を探る

 

 

2018年9月の読書

元々は、勉強した事柄のまとめとしてこのサイトを利用しようと思っていたのですが、あまりにも更新頻度が遅くなってしまうため、各月に読んだ読み物(not 教科書)に関する記事も作成することにしました。

ザ・クオンツ 世界経済を破壊した天才たち

金融工学の興隆から2007年のクオンツ・ショック、そしてリーマン・ショックまでを、AQR, Citadel, Renaissance Technologies, Sabaといった超有名なヘッジファンドに焦点を当てつつ物語が進んでいきます。

これらファンドの成り立ちやそのFMの経歴について本書で始めて知りました。

それにしても、Renaissance Technologiesの創業者のJamas SimonsがChern*1と共同論文を書いているほどの数学者だったとは驚きです。私のような凡人は金融業界でどうやって生きていけばいいのでしょうか…

一方で、アービトラージ戦略やHFTについての記述はあまりされておらず、どちらかと言うとデリバティブの話がメインで書かれていたため、クオンツ全体の話としてはやや不完全燃焼です。少し古い本なのでやむを得ないです。

また、本書で度々登場するクオンツの先駆けであるエドワード・ソープの有名な著書、『Beat The Dealer : A Winning Strategy for the Game of Twenty One』もいつか読んでみたいところです。

ザ・クオンツ  世界経済を破壊した天才たち

ザ・クオンツ 世界経済を破壊した天才たち

 

 

ウォール街アルゴリズム戦争

 上記のThe Quantsでやや不完全燃焼であったので、HFTに関する本ということで本書を読みました。

計算機の発展及びアメリカ証券取引委員会(SEC)の規制改革に伴って、必然的に株取引が電子化されるようになるまでの一連の流れが書かれています。副題のダークプールについてはそれほど明確に記述されているわけではありませんが、比較的新しい本であるので、アメリカの市場の現状をある程度は語ることができている気がします。

私は、人間が介在していた頃のナスダック・NYSEの仕組みについて知らなかったため、少し読みづらかったです。

最終的にアメリカでは市場が営利化した弊害によって、インサイダーやグレーな注文形式といった利益相反問題が積み上がっていることが描かれています。本書の最後には、日本とアメリカの市場を対比した解説が追記されており、なかなかに勉強になりました。

ここ数年、アメリカでは開発のコストがかかりすぎて、単純なレイテンシーアービトラージでは稼げなくなってきており、HFT業者の統廃合が進んでいるといった話も聞きますが、今後はどうなっていくのでしょうか?

しかし、結局は規制が全てな気がするので、個人的にはそこまで業界の行く末に興味が持てません。*2どちらかというと、ロケットエンジニア→デリバクオンツ→アルゴクオンツ→データサイエンティスト、機械学習エンジニアといった市政のエンジニアの流れの次に来るものに興味があります。

参考までにHFTが全盛期であった際の、Virtu-FinantialというHFT業者の収益の図を見つけたので置いておきます。*32009-2013で1237勝1敗と尋常じゃない勝率です。

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ウォール街のアルゴリズム戦争

ウォール街のアルゴリズム戦争

 

 

世界でもっとも強力な9のアルゴリズム

金融系の読み物とは打って変わり、純粋なComputer Scienceの読みものです。

検索エンジン公開鍵暗号、誤り訂正、パターン認識、データ圧縮、データベース、デジタル署名、計算可能性の各分野の基本的なアイデアを非常に平易に解説してくれています。

情報系に関わっていればどこかで聞いたことがある話がほとんどですので、1日もあれば軽く読み流せてしまうでしょう。

データベースとデジタル署名に関しては少し勉強になりました。

世界でもっとも強力な9のアルゴリズム

世界でもっとも強力な9のアルゴリズム

 

 

 

*1:Chern-Simons theory

*2:ただし、昨今の流行りのライブラリやフレームワークの使い方等ではなく、低レイヤといったComputer Scienceそのものに関する知見が重宝される仕事という意味では私はとてもHFT業界が好きです

*3:

Virtu Financial, the high-frequency trader who had just 1 day of trading losses in 1,238 days, files for IPO | Financial Post