元々は、勉強した事柄のまとめとしてこのサイトを利用しようと思っていたのですが、あまりにも更新頻度が遅くなってしまうため、各月に読んだ読み物(not 教科書)に関する記事も作成することにしました。
ザ・クオンツ 世界経済を破壊した天才たち
金融工学の興隆から2007年のクオンツ・ショック、そしてリーマン・ショックまでを、AQR, Citadel, Renaissance Technologies, Sabaといった超有名なヘッジファンドに焦点を当てつつ物語が進んでいきます。
これらファンドの成り立ちやそのFMの経歴について本書で始めて知りました。
それにしても、Renaissance Technologiesの創業者のJamas SimonsがChern*1と共同論文を書いているほどの数学者だったとは驚きです。私のような凡人は金融業界でどうやって生きていけばいいのでしょうか…
一方で、アービトラージ戦略やHFTについての記述はあまりされておらず、どちらかと言うとデリバティブの話がメインで書かれていたため、クオンツ全体の話としてはやや不完全燃焼です。少し古い本なのでやむを得ないです。
また、本書で度々登場するクオンツの先駆けであるエドワード・ソープの有名な著書、『Beat The Dealer : A Winning Strategy for the Game of Twenty One』もいつか読んでみたいところです。
- 作者: スコット・パタースン,永峯 涼
- 出版社/メーカー: 角川書店(角川グループパブリッシング)
- 発売日: 2010/08/28
- メディア: 単行本
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ウォール街のアルゴリズム戦争
上記のThe Quantsでやや不完全燃焼であったので、HFTに関する本ということで本書を読みました。
計算機の発展及びアメリカ証券取引委員会(SEC)の規制改革に伴って、必然的に株取引が電子化されるようになるまでの一連の流れが書かれています。副題のダークプールについてはそれほど明確に記述されているわけではありませんが、比較的新しい本であるので、アメリカの市場の現状をある程度は語ることができている気がします。
私は、人間が介在していた頃のナスダック・NYSEの仕組みについて知らなかったため、少し読みづらかったです。
最終的にアメリカでは市場が営利化した弊害によって、インサイダーやグレーな注文形式といった利益相反問題が積み上がっていることが描かれています。本書の最後には、日本とアメリカの市場を対比した解説が追記されており、なかなかに勉強になりました。
ここ数年、アメリカでは開発のコストがかかりすぎて、単純なレイテンシー・アービトラージでは稼げなくなってきており、HFT業者の統廃合が進んでいるといった話も聞きますが、今後はどうなっていくのでしょうか?
しかし、結局は規制が全てな気がするので、個人的にはそこまで業界の行く末に興味が持てません。*2どちらかというと、ロケットエンジニア→デリバクオンツ→アルゴクオンツ→データサイエンティスト、機械学習エンジニアといった市政のエンジニアの流れの次に来るものに興味があります。
参考までにHFTが全盛期であった際の、Virtu-FinantialというHFT業者の収益の図を見つけたので置いておきます。*32009-2013で1237勝1敗と尋常じゃない勝率です。
世界でもっとも強力な9のアルゴリズム
金融系の読み物とは打って変わり、純粋なComputer Scienceの読みものです。
検索エンジン、公開鍵暗号、誤り訂正、パターン認識、データ圧縮、データベース、デジタル署名、計算可能性の各分野の基本的なアイデアを非常に平易に解説してくれています。
情報系に関わっていればどこかで聞いたことがある話がほとんどですので、1日もあれば軽く読み流せてしまうでしょう。
データベースとデジタル署名に関しては少し勉強になりました。
- 作者: ジョン・マコーミック,長尾高弘
- 出版社/メーカー: 日経BP社
- 発売日: 2012/07/19
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