読書:2021年2月
お久しぶりです?
少し思うことがあったので,ブログを1年ぶりに更新してみました.
ここ1年程の間に読んでいた教科書類も近日中に更新しようかと思います.
乱雑に感想を書き留めていたのですが,纏めるのが面倒で放置していましたので.
失敗の本質 日本軍の組織論的研究
失敗について少し考えることがあったので,いい機会だと思い積み本を消化しました.
著者たちも序章で述べていますが,"組織"の失敗がメインテーマです.個人に帰着する失敗にはあまりフォーカスせず,むしろそのような失敗を誘発することになった組織的なコンテキストに焦点が置かれています.最も合理的な組織であるはずの軍隊がなぜ失敗したのか,という考察の適切な対象として,日本軍が取りあげられています.
1章は大東亜戦争(太平洋戦争)の6つの(敗戦した)戦闘をケーススタディとして紹介しています.私が日本軍に詳しくない&文章が堅苦しく,読むの苦痛でした.40年近く前に初版が発行された本が,さらに40年前の資料を参照しているので当たり前なのですが…(ちなみに私の手元にあるは74版です)
2章・3章で米軍と対比する形で考察を行っていますが,結論としては,
- あいまいで多義性を持つ戦略目的(⇒戦略目的の非共有,個々人での帳尻を合せ)
- 主観的でともすれば非科学的な戦略策定
- 戦略オプションの少なさ
- 官僚組織の中において,過度の俗人的ネットワークの混在・偏重
- 既存の枠組みの中での強化に過ぎず,固定的であった学習
- プロセスや動機を重視した業績評価
といった巷でよく聞くものが日本軍の組織として(環境適応の)失敗の本質と結論付けています.*1
こちらの本の影響の大きさを示唆するのかもしれませんが,私にはあまり目新しく思えずフ~ン・マアソウダヨナといった感じでした.本書を読んでいると日本軍サゲ・米軍アゲの気分になってきますが,実際には上記のような部分は米軍にも十分存在すると思われるので,要は程度問題の差なのでしょう.*2
翻って,私の周囲のことに当てはめて考えてみると,戦略部分に関しては近しいもの(不満)を強く感じた案件(業務)は,まあ失敗するのもむべなるかなと思うようなりました.*3 .目的が多義的で,役割や責任の所在が不明瞭ですと,結果として個々人が自分に都合よい局所最適化のようなことを行いがちになるのではないでしょうか.そこで最終的に帳尻が合わないと,"組織"としては失敗ということになるのでしょう.
2年目の終わりになって,良くも悪くも自社の組織文化に同化していっていることを最近強く感じているので,初心(やその頃に感じた違和感)を忘れないようにしたいと思います.
外資1年目の教科書
パッと社内で目に付いたので,気晴らしに一読しました.
債券セールスの方が書かれているマインドセット本みたいな感じでしょうか.
こういった本は教科書と違って,サクッと読めていいですね.最近はもう数学書がまともに読めません☺
外資系金融機関で働くのも(仮定法),人生の密度を高めるという観点ではよさそうだな~と思います.
私の性格でやっていけるとは思えませんが.
DIT WITH ZERO 人生が豊かになりすぎる究極のルール
発売当初にも読んだのですが,再読しました.
コモディティ*4・トレーダー出身のHFマネージャーが書かれており,金融業の匂いをあちらこちらに感じます."金銭的な"成功者のバイアスも多分に感じます.
ゼロで死ぬのがいいのかは分かりませんが,日々つらつらと考えることを改めて言語化してくれています.
まとめると,お金を適切に利用して,人生全体の効用を最適化(最大化)しろということでしょうか.とは言え,最適化の常として,オーバーフィットには十分に気を付ける必要があるとは思います.こちらの本の主張にオーバーフィットすると生き急ぐことになってしまう気も.
2,3時間もあれば軽く一読できるので,気分転換に読んでみてもいいかもしれません.
Impressiveだった断片を残しておきます.
Rule 1:Maximize Your Positive Life Experiences
- 限られた時間のなかで最大限に命を燃やす方法を考えなければならない.~(中略)~これは最適化の問題だ.
- 大切なのは,自分が何をすれば幸せになるかをしり,その経験に惜しまず金を使うことだ.
Rule 2:Start Investing in Expericences early
- 人生で一番大切な仕事は,思い出づくりです.最後に残るのは結局それだけなのですから.
- 元の経験から副次的に生まれる経験はまさに記憶の配当だといえる.~(中略)~金を払って得られるのは,その経験だけではない.その経験が残りの人生でもたらす喜び,つまり記憶の配当も含まれているのだ.
Rule 4:Use All Available Tools to Help You Die With Zero
- 私たちは,死から目を背けることで人生を最適化できていない.~(中略)~人生の残りの時間を意識しよう.それが現在の行動に大きな影響をあたえるはずだ.
- 「ゼロで死ぬ」とは金だけの問題ではない.それは時間の問題でもある.限られた時間とエネルギーをどう使うべきか.私たちはそれを,もっと真剣に考えるべきだ.
Rule 5:Give Money to Your Children or to Charity When It Has the Most Impact
- そもそも子供たちには,あなたが死ぬ「前」に財産を与えるべきだ.なぜ,死ぬ時まで待つ必要があるのか?
Rule 7:Think of Your Life as Distinct Seasons
- 私たちは皆,人生のある段階から次の段階への前進し続ける.ある段階が終わることで小さな死を迎え,次の段階に移る.二度と同じときを過ごせないのは悲しいことだが,逆に言えば,私たちが長い人生の間に,いくつもの生を生き,喜びや楽しみを味わえると言うことでもある.
- 実際のところ,私たちが思っているほど先延ばしできない経験は多い.にもかかわらず,私たちはそれを自覚していない.~(中略)~人生の各段階で使える時間はそれほど多くない.
Rule 9:Your Biggert Risks When You Have Little to Lose
- 行動をとらないことへのリスクを過少評価するべきではない.~(中略)~リスクの大きさと不安は区別するべきだ.
Afterword
- 挑戦しよう,人生を最大限に充実させ,たった一度の人生を価値あるものにしよう.
- 人生で一番大切なのは思い出を作ることだ.
あと,副題 - Getting All You Can from Your Money and Your Life - の訳はもうちょっと何とかならなかったのでしょうか…
まあ全体としてお悩み多きお年頃ということです.
2019年8月〜2019年10月の読書
債券運用と投資戦略
新入社員らしく,定番の本の読書です.
数学はほとんど出てきませんが,債券の基本的なトピックに関して端的かつ本質的な説明がされており,債券運用上,非常に示唆に富む内容が各所に散りばめられている気がします.
私は,債券に関する知識を殆ど持っていなかったため,全体として,非常に勉強になりました.
個人的には,日本の債券市場の歴史や日銀のオペレーション,ALMといったテーマが目新しく,楽しかったです.
今後,「債券分析の理論と実践」も読んでおきたいところですが,どのくらいきちんと読む(読める)か悩み中です.
Pytorch開発入門
ライトユーザーとしては,断片的なドキュメントやチュートリアルを読むよりは時間的に効率がよいかと考え,ざっと一読しました.(約1時間)
誰でも,"AI"を簡単に実装できる時代であることをひしひしと感じます.
torch.distributedあたりの分散計算に関して,載せておいてくれるとありがたかったです.
現場で使える!PyTorch開発入門 深層学習モデルの作成とアプリケーションへの実装 (AI & TECHNOLOGY)
- 作者: 杜世橋
- 出版社/メーカー: 翔泳社
- 発売日: 2018/09/18
- メディア: 単行本(ソフトカバー)
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ルベーグ積分論
一度きちんと測度論を勉強するべきだと考え,本書を真面目に読みました.
行間がほぼなく,自分で修正可能な程度の絶妙なミスがあったりするので,私にはほどよい難易度でした.
始めの3章で脇道に逸れず*1シンプルに測度空間を構成しており,分かりやすかったです.
本書を読んで,位相にもとづく定義を避けるために,可測集合を
$$ \mu(A) = \mu(E \cap A) + \mu(A - E) $$
として,定義しているということを理解しました.
過去に流し読みした,ルベーグ積分入門とどちらが良いのかは微妙なところです.
一方で,流体力学が専門の先生が執筆されていることもあり,ファイナンスではなくPDEを応用先として想定している記述が見受けられます.もう少し,定義域や値域が実数でないケースが,丁寧に記述されていると嬉しかったです.
本書の先には,シュワルツ超関数やべゾフ空間といったテーマがありそうですが,今生では学べる時間はなさそうです*2
なお,写経ノートをアップロードするのは,辞めることにしました.(過去の投稿のものも消しました)
2019年4月〜2019年7月の読書
お久しぶり?です.
アクセス数が減らず困惑していますが,見てくださっている方がいるので,少し頑張って更新してみました.
が
入社して以来,じっくり時間をとって勉強をすることができておりません.業務外にadditional な inputを行なうことが困難です.もっと,腰を据えて数学(特に確率解析)を勉強しておくべきでした(泣)
今後は四半期に一度更新できれば…くらいのスタンスで行こうと思います.
以下,書評.*1
アルゴリズム取引の正体
アルゴリズム取引に関する本ですが,調べれば分かりそうなことがつらつらと書いてあり,対象となる読者のレベルがよく分かりません.この分野は,あまり情報が表にでることがないのでやむをえない気もしますが…
本章を読んでも,深い知識や理解が得られるわけではないですが,市場や約定の仕組み・マーケットメイク戦略といったアルゴリズム取引の外観について初歩的な事実がまとまっているので,興味があれば,ざっと読むくらいでよいのではないでしょうか.数日もあれば,読み終わります.
その他,以下の資料を眺めてました.(理解できたとは言っていません)
- https://www.ism.ac.jp/editsec/toukei/pdf/65-1-087.pdf
- https://glim-re.repo.nii.ac.jp/?action=pages_view_main&active_action=repository_view_main_item_detail&item_id=3515&item_no=1&page_id=13&block_id=21
-
JAIST Repository: 金融商品取引アルゴリズムのハードウェアアクセラレーションに関する研究 [課題研究報告書]
-
How to Get a Job at a High Frequency Trading Firm | QuantStart
あと,東証はもっと分かりやすく細かい情報を開示してください.
メモ.
- IS(Implementation Shortfall)によって執行を評価.
- 取引コスト→付随費用(手数料etc)+潜在コスト
| 潜在コスト | 内容 | 備考 |
|---|---|---|
| 遅延コスト | 投資の意思決定時の価格と執行時の価格の変化 | 時間差 |
|
Market Impact コスト |
流動性の消費/取引情報の流布 | 短期/長期 |
|
タイミングコスト |
市場価格の自己注文以外の要因による変化 | 複数執行時 |
|
機会コスト |
執行を完了できない場合に発生するコスト |
アルゴリズム取引
アルゴリズム取引の書籍その2.本屋で隣に売っていたので買いました.
アルゴリズム戦略を定式化して扱っており,前書よりアカデミックな雰囲気が出ています.本文自体は100ページ程度と少なく,市場参加者・板情報・戦略それぞれのモデル化の紹介という感じです.
また,Appendixの確率論がシンプルにまとまっており,よかったです.
金融工学入門
積み本の消化.
ところどころ腑に落ちないところもありますが,金融工学の基礎的かつ本質的なトピックが詰まっている(気がする),よい本でした.前書きにあるように,キャッシュ・フローを中心として,話を展開しているのが特徴的です.一読する価値はあると思います.
学部生の頃にゆっくり時間をかけて読みたかったなぁという感じです.*2
全体的に,もっと数式を用いて話の展開をしてくれれば分かりやすかった気がします.(わがまま)
例えば,Projection Pricingなどは本書の説明を読んでもしっくり来ませんでしたが,著者の資料*3を眺めていたところ,理解が深まりました.
章末問題を解くのが面倒くさいので,誰か答えを…
- 作者: デービッド・G.ルーエンバーガー,今野浩,鈴木賢一,枇々木規雄
- 出版社/メーカー: 日本経済新聞出版社
- 発売日: 2015/03/26
- メディア: 単行本(ソフトカバー)
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pythonで学ぶ強化学習
板情報に強化学習を適応するという例*4をいくつか見かけたため,強化学習に関する本を1冊流し読みしました.
強化学習がよく分からないということが,よく分かりました…
本書が強化学習を学ぶための1冊目としてよいのかどうかは分かりませんが,説明はほどほどに,「とりえずCodeを読め!」という姿勢は好きです.
機械学習スタートアップシリーズ Pythonで学ぶ強化学習 改訂第2版 入門から実践まで (KS情報科学専門書)
- 作者: 久保隆宏
- 出版社/メーカー: 講談社
- 発売日: 2019/08/31
- メディア: 単行本
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*2:ちなみに,間違っているという噂もあります
*3:https://web.stanford.edu/~luen/RealOptions/Projection.pdf
*4:Courseraのreinforcement learning in finance等
生存
更新する気はあります…
2019年02月の読書
Programming in Haskell
すごいH本の次に「Haskell入門 関数型プログラミング言語の基礎と実践」を読み始めたのですが,一瞬で挫折したので切り替えました.
ST sモナド及びTraversableの節が非常によかったです.本書を読んでstatefull computationの概念が少し理解できました.
遅延評価に関しては,相変わらずよく分かりません.「Expert C Programming」的な本が求められています.
測度・確率・ルベーグ積分
数学弱者なので眺めていました.かなりコンパクトにまとまっていて良いと思います. 本格的な確率解析を勉強する前段階として,ベストな気がします*1.
測度・確率・ルベーグ積分 応用への最短コース (KS理工学専門書)
- 作者: 原啓介
- 出版社/メーカー: 講談社
- 発売日: 2017/09/21
- メディア: 単行本(ソフトカバー)
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*1:私は真面目に数学を勉強したことはありません.一応.
工学のための関数解析 山田功
工学のための関数解析
修士論文を書くにあたって,関数解析の復習をする必要が少し出てきたので評判の良かった本書を読みました.関数解析は.院試の際に軽く勉強したはずなのですがすっかりと抜け落ちてました…
本書ですが,実線型関数解析に関してスペクトル周りの理論を除いて,最低限必要な知識がさっぱりとまとまっている感じの本でした.
ε-δや距離空間をそれなりの紙面を割いて丁寧に説明しており,積分も基本的にリーマン積分を用いているので,タイトルの通り,数学に近くない工学系の方にちょうど良いくらいなのではないでしょうか.
全体として,Statementが多く,行間が少なく読みやすい一方で,本質的なところが分かりにくくなっているきらいもある気がします.
最終章で応用として凸解析が挙げられていますが,駆け足気味で行間も若干広いので,他書をあたった方がよいかもしれません.












